27/80
ヘッセ シャボン玉
長い年月の研究と思想の中から
遅くなって一老人が晩年の著作を蒸留させる。
そのもつれたつるの中に彼は戯れつつ甘い知恵を紡ぎこんだ。
溢れる情熱に駆られて、ひとりの熱心な学生が
功名心に燃え、図書館や文庫をしきりとあさりまわって
天才的な深さのこもった青春の著作を編んだ。
ひとりの少年が腰をかけて、わらの中に吹きこむ。
彼は色美しいシャボンの泡に息を満たす。
泡一つ一つがきらびやかに賛美歌のようにたたえる。
少年は心のありたけをこめて吹く。
老人も少年も学生も三人とも、
現世の幻の中から不思議な夢をつくる。
それ自体は無価値だが、その中で永遠の光がほほえみつつ
みずからを知り、ひとしおたのしげに燃え立つ。
物や事柄の価値は人間たちが作りだした。価値がある物と価値がない物を相対的に決め始めたけれど、元々は価値というものはどこにでもなくて、ただ必要であるか必要じゃないかという差異でしかなかった。何事も無価値。意味があるものも意味がないものも無価値。
けれど、確かに我々人間というのは価値を持っていることを信じている。自分には価値があると思っているから、色んな出来事で怒ったり笑ったり悲しんだりする。
価値(Wörter)は
この文章におちはない。
ヘッセ シャボン玉
長い年月の研究と思想の中から
遅くなって一老人が晩年の著作を蒸留させる。
そのもつれたつるの中に彼は戯れつつ甘い知恵を紡ぎこんだ。
溢れる情熱に駆られて、ひとりの熱心な学生が
功名心に燃え、図書館や文庫をしきりとあさりまわって
天才的な深さのこもった青春の著作を編んだ。
ひとりの少年が腰をかけて、わらの中に吹きこむ。
彼は色美しいシャボンの泡に息を満たす。
泡一つ一つがきらびやかに賛美歌のようにたたえる。
少年は心のありたけをこめて吹く。
老人も少年も学生も三人とも、
現世の幻の中から不思議な夢をつくる。
それ自体は無価値だが、その中で永遠の光がほほえみつつ
みずからを知り、ひとしおたのしげに燃え立つ。
物や事柄の価値は人間たちが作りだした。価値がある物と価値がない物を相対的に決め始めたけれど、元々は価値というものはどこにでもなくて、ただ必要であるか必要じゃないかという差異でしかなかった。何事も無価値。意味があるものも意味がないものも無価値。
けれど、確かに我々人間というのは価値を持っていることを信じている。自分には価値があると思っているから、色んな出来事で怒ったり笑ったり悲しんだりする。
価値(Wörter)は
この文章におちはない。
コメント