あえて選び、たどり着く旅地への途中3

夕食は十兵衛からほど近くにある大衆居酒屋になった。
松本に訪れた時間が遅くて、雰囲気が良いお店は大方閉まっていたなかで、そこだけ深夜１１時まで営業していたから。友達がそうそうにどこかのお店に入ってご飯を食べたかったのが、その大衆居酒屋にした最大の理由。

しぶしぶ入ってみると、やはりいい値段がする居酒屋だったのだが、その分料理は美味しくて、しかもずっと飲みたかった"夜明け前"の季節限定生原酒が置いているではないかと嬉しくなった。けど、自分は１合だけ飲めればよかったものの、お品書きには４合瓶のみで価格設定は通常価格の３倍と、さすが飲み屋さん価格といったところ。

諦めようとしたら、友達が快く『いいよ』と申し出てくれたので、ずいぶん高い美酒だなと深く味わうことができた。転職はできていたけれど、懐具合は心もとなかった。しかし、久しぶりの小旅行とあって気持ちを大きくして、あれほど多くの料理を頼んだのは初めての経験かもしれない。本当に楽しい晩餐だった。快諾してくれた友達は美味すぎる夜明け前に、手洗い場へ行く羽目となった。

それから運転代行を初めて呼んで、初めて野郎３人でブティックホテルに泊まることとなった。３人で泊まると料金が１．５倍になったのだけれど、部屋が大きくてベッドだけで１０畳ほどあって寝返りは楽しく狭苦しくなることもなかった。ミネラルサーバー完備でお茶やコーヒーも備えてあって、お風呂は大きくて一人で泊まってもいい部屋だった。適当な動画を大きなディスプレイで観て、小腹が空いたからハニートーストを頬張り、気持ちよく酔いがフランフランとなったころ消沈した。